Kana Takeda's Spur
未来価値研究室
研究員
いまの時代の問題は、一つでも多く
自分たちの世代で解決し、
よりよい社会を次世代に引き継ぎたい。
お歳暮の時期に銀座の百貨店で短期アルバイトをしていたのですが、その終了が近づいた頃、働いていた店の近くにあったコーヒーショップのスタッフ募集の貼り紙をたまたま目にして、「次はここでいいかな」と軽い気持ちで応募したのが、外資系コーヒーチェーンの日本上陸1号店でした。このお店ではそれまでの人生で出会ったことのなかった多様なバックグランドを持つ人たち~フリーター、演劇勉強中の学生、海外高校卒の大学生、他の飲食店からの転職者~と一緒に働きました。もともと外交的な性格ではなかった私にとって、偶然にも多種多彩な仲間と働くことは強烈な体験となり、自分の価値観を変えた経験といっても過言ではありません。
このチェーンにはコーヒー等の作り方以外にマニュアルがなく、接客にしても誰かが具体的なやり方を教えてくれるということはありませんでした。研修は映像を見ながら、「こんな場合ではどうするか」を議論するワークショップ形式で、現場でもそれぞれが自分の頭で考えて臨機応変に対応しなくてはなりませんでした。小さい頃からコツコツと頑張るのが得意なタイプでしたが、それだけでは、時々のシチュエーションにおいてなすべきことを瞬時に判断し、動くことはできない。そんな気づきを得ながら働くことで、人の役に立つとはどういうことなのかを身をもって学ぶことができました。
コンサルタントを目指したきっかけは、大学院生時代に行った企業との共同研究です。研究内容は、脳の情報処理特性をベースに、情報端末に提示する情報の質や量と安全性との関係についてでした。脳がオーバーワークになって事故につながらないように、どのような情報を、どのようなタイミングで、どの程度の量まで端末に提示することが適当なのかを検証し、情報端末を作っている企業に報告していました。そのとき衝撃的だったのは、研究によって「これ以上の情報処理作業を必要とする機能追加は避けるべき」ということがわかっても、企業側からは「他社が競って機能の追加を行っている中で、当社だけが追加しないという判断は簡単ではない」と言われたことでした。今となれば企業側の主張も理解することはできますが、当時のわたしには衝撃でした。
正しいという事実だけでは現実を変えることは難しいんだなと痛感させられ、アカデミックなファクトとそれを活用する人たちが互いに歩み寄るためのお手伝いをしたいと考え、コンサルタントという仕事に興味を抱きました。特に、国の政策や人びとの意識など、より大きな枠組みから変えていく必要があるのではないかと考え、公共系のシンクタンク機能を持つNRIに入社しました。
入社して20年近くになりますが、これまで順風満帆だったとはとても言えません。特別なスキルや専門知識を持っているのがプロフェッショナルのはずなのに、それらを充分に持てていない自分とプロのコンサルタントとのギャップに悩み、いつになったら自信を持ってコンサルタントだと名乗れるようになるのか。中堅と呼ばれるようになった頃には、そんなふうに自分のことを思っていました。
そんなときに出会ったのが「変化に貪欲であれ」という言葉です。マッキンゼーを創設したマービン・バウアーが掲げたプロフェッショナルの条件の一つなのですが、尖った専門領域のない自分でも、「変化に貪欲である」ことであれば、これからの自分の心がけ次第でできるかもしれないと思ったのです。それ以来、環境に変化があったり、悩ましい局面に遭遇するたびに「これを乗り越えてこそプロフェッショナルに近づける」と自分に言い聞かせて仕事を続けてきました。もちろん全ての変化に対応できたわけではありませんが、これまで仕事を続けてこられたのは、この言葉に出会えたからだと思います。
現在所属している未来創発センターは、社会課題や政策課題など、これから解くべき中長期の課題に対して、NRIのインサイトを明確にし、オピニオンを提示することを業務とする部署です。取り上げるテーマや問題提起の仕方は担当者によってさまざまですが、わたしは雇用政策や働き方・暮らし方改革などを主なテーマとして、自分なりの切り口で調査を行ったり、既存の調査結果や統計を分析したりして課題の本質と思えるものをつかみ、優先順位を付けて解決策を提示する活動をしています。
未来創発センターでの仕事は対外発表が目立つため、華やかな印象を持たれることもよくありますが、実態は細かな作業をコツコツと続けることの多い地道な仕事です。それでも、NRIに入社した際の想い-ファクトとそれを活用する人たちとの橋渡しがしたい-を実現できるこの仕事をとても気に入っています。たとえ時間はかかっても、少しずつでもいいから現代の世界を生きやすい場所にしていきたい。そんな挑戦に関われていることに感謝しています。
講演やレポート発表、新聞や雑誌への寄稿などに際しては、一字一句の表現に魂を込めることを意識しています。ときには社内から「この表現は変えたほうがいい」という意見をもらうこともありますが、それが自分なりに考え抜いた末の言葉であれば、お願いしてそのまま通してもらうこともあります。それくらい、自分が発する言葉には責任を持ちたいと考えています。
わたしは雇用や働き方をテーマにしているので、少なくとも、現代に明らかになっている問題はわたしたちの時代に解決して、いまの子どもたちが働くようになる30年後に同じような問題で悩むような人をなくしたい。若い人が希望を持てて、可能性を感じられる未来を残したい。大人の一人として、今の仕事を通じ、そんな未来社会創りに貢献していきいと思っています。もちろん、わたし一人の力でそんな社会を創ることはできないので、多くの人たちと力を合わせてやっていきたい。その一員でありたいと願っています。
※部署名、内容はインタビュー当時のものです。
OTHER INTERVIEW
Tomoko Takashio
金融ソリューション事業推進一部
グループマネージャ
Kanako Fujita
SLプロジェクト二部
プロジェクトマネージャ
Sachiko Shiba
産業システム事業二部
グループマネージャ
Kana Takeda
未来価値研究室
研究員
Megumi Endo
IT基盤HRM部
部長
Tomoe Yabu
産業システム事業三部
グループマネージャ
Yuka Shiromoto
金融ソリューション事業推進一部
アプリケーションスペシャリスト
Eri Nishiyama
YHシステム事業部
アプリケーションスペシャリスト
Ayumi Murata
人事部
ダイバーシティ推進課長
Akiko Gondoh
IT基盤技術戦略室
ITアナリスト